がん患者さんには筋トレをおすすめしていますが、病状(転移の部位)や治療の副作用・後遺症などで筋トレができない場合もあります。そういった方は、座ったり、ベッドに寝た状態でもできるトレーニング EMSを試してもいいかもしれません。
はじめに
がん患者さんには筋トレをおすすめしています。
昨年出版させていただいた「がんに負けないたった3つの筋トレ」では、すべてのがん患者さんに、筋トレのメリットと、簡単な3つのメニューを解説しています。
ただ、一部のがん患者さんは、病状やがんの転移部位などによって筋トレができない場合や、あるいは、抗がん剤の副作用で全く動けないような日もあると思います。
そういった方は、どうやったら筋肉量を維持できるか、ということが問題になります。
そこで、今回は、ベッド上でもできるEMSについてお話します。
ベッド上でもできる筋トレ
EMSとは、electric muscle stimulation あるいは、electromyostimulationといって、電気刺激で筋肉を収縮させる方法で、リハビリや筋肉をつける目的などで広く使われています。
じつは、私も持っているんですが、こちらの東レのトレリートという製品です。
簡単に説明しますと、刺激したい筋肉にパッドを張って、電気を流すだけです。
そうすると、筋肉が収縮します。
最初はピリピリ痛い感じがしましたが、今では慣れて、気持ちいいですね。
このEMSですが、じつは、様々な研究によって、筋トレと同じような効果を得られることがわかってきました。
つまり、筋肉量を維持したり、増やす効果が期待できるということです。
最近の研究報告をひとつ紹介します。
EMSは筋トレと同様に筋肉量が増える
Int J Environ Res Public Healthという雑誌にこのほど報告された論文です。
20~40歳までの健常な成人男子40人を、以下の4つのグループにランダムに分けました。
- EMSのグループ:EMSだけを8週間つづける(週2回、上腕の筋肉に24分間)
- 筋トレのグループ:筋トレだけを8週間つづける(週2回、ダンベルカールなど上腕の筋肉を鍛えるメニュー)
- EMS+筋トレのグループ:EMSと筋トレの両方を8週間つづける
- コントロールグループ:いかなる運動もしないグループ
8週間後に、上腕の筋肉の厚さを、超音波を使って調べました。
その結果、なにも運動をしなかったコントロールグループでは、筋肉の厚さに変化を認めませんでしたが、EMSのグループ、筋トレのグループ、そして、EMSと筋トレの併用グループでは、有意に筋肉の厚さが増加していました。
また、EMSと筋トレ、そして、併用群の間に、筋肉の厚さに違いはみられませんでした。
つまり、どのトレーニングでも、同じように、筋肉がついたということです。
まとめ
というわけで、EMSは、筋トレにかわる、新たな筋肉維持・筋肉増強のトレーニングになる可能性があるということです。
EMSですと、座っていてもできますし、あるいはベッド上でもできますので、通常の筋トレができないがん患者さんや、つらい副作用の時でも、使えるツールだと思います。
ですので、筋肉を維持するひとつの手段として、活用してもいいかもしれません。
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