健康診断などで測定する血液検査の項目に、「LDLコレステロール」というのがあります。LDLコレステロールは悪玉として知られていて、血液中の値が増えると動脈硬化や心血管病を引き起こします。では、LDLコレステロール値とがんとの関係はどうでしょうか?
はじめに
健康診断などで、目にする血液検査の項目に、LDLコレステロールというのがあります。
コレステロールは、リポタンパク質という粒子になって血液中を流れて、全身に運ばれますが、重さによって、高比重リポタンパク質(High Density Lipoprotein: HDL)と、低比重リポタンパク質(Low Density Lipoprotein: LDL)に分類されます。
ですから、軽いほうのコレステロールが、LDLコレステロールということです。
LDLコレステロールのはたらき
そのはたらきですが、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収して肝臓にもどす役割があります。
一方で、LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割をもっています。
ところが、このLDLコレステロールが血液のなかで増えすぎると動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞を発症させるため、「悪玉コレステロール」と呼ばれることもあります。
LDLコレステロールの基準値は、検査方法などによって幅がありますが、60~120 mg/dL未満で、120 mg/dL以上で境界域、140 mg/dL以上ですと高LDLコレステロール血症(脂質異常症)と診断されます。
LDLコレステロールが高い人のなかには、病院で処方されたコレステロールを下げる薬を飲んでいる人もいると思います。
では、LDLコレステロールとがんとの関係はどうなんでしょうか?研究結果を紹介したいと思います。
LDLコレステロールとがんとの関係
2020年にブリティッシュメディカルジャーナルに掲載された論文です。
デンマークの10万人以上の国民を対象とした大規模な前向き観察研究です。
研究開始時に採血検査をおこなってLDLコレステロール値を測定し、その後9.4年間の観察期間中のがんなどによる死亡率およびすべての原因による死亡率を調査しました。
結果ですが、LDLコレステロール値とがんによる死亡率との間には、U字型の関係がみられました。
最もリスクが低かったのは、LDLコレステロール値が132-154 mg/dLの比較的高めのグループで、それよりもかなり低いグループ(70 mg/dL未満)と、かなり高いグループ(190 mg/dL以上)では、ともにがん死亡リスクが高くなっていました。
どちらかというと、高いグループより、低いグループのほうが、リスクがより高くなる傾向がありました。
がんだけでなく、すべての死因による死亡リスクについても、同じようなU字型の関係がみられました。
そして、最も死亡リスクが低かったLDLコレステロール値は、140 mg/dLという結果でした。
つまり、この研究結果では、この脂質異常症の診断基準となる140 mg/dLあたりの人が最も長生きするという結果でした。
以前の動画で、総コレステロール値とがんとの関係についての研究を紹介しましたが、その結果でも、総コレステロール値が低い人のほうが、がんになりやすく、とくに、日本人では、肝臓がんのリスクが5倍以上にもなるという結果でした。
まとめ
というわけで、理由ははっきりしませんが、コレステロールが高すぎてもだめですが、低すぎてもがんで死ぬリスクが高くなるということです。
とくに今回の研究でも、悪玉と呼ばれているLDLコレステロール値に関しては、若干、高めのほうがいいという結果でした。
コレステロールもからだに必要な栄養素ですので、油を極端に控えた無理なダイエットや、不必要な内服治療は、やり過ぎるとむしろ危険だと考えられます。
このチャンネルでいつも言っていることですが、なにごとも「ほどほど」が大事ということです。
というわけで、今回は、悪玉コレステロールとがんとの意外な関係についてのお話しでした。
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