がんが治療なしで自然に小さくなったり消失することを「自然退縮(あるいは自然寛解)」といいます。その頻度は不明ですが、じっさいにがんの自然退縮の症例がたくさん報告されています。癌が自然に消えるその原因は何でしょうか?
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はじめに
がんの自然退縮(あるいは自然寛解)とは、がんが、通常の治療を受けずに自然に小さくなったり、消失することです。
その頻度については正確な数字はありませんが、まれであることは確かです。とはいえ、実際には世界中から多数報告されています。
がんの種類別にみると、大腸がん、肺がん、乳がん、などが多い印象です。難治癌といわれるすい臓がんでも、自然退縮の症例が報告されています。
がんが自然に退縮した1例
じっさいの症例を紹介します。
これは、2017年の日本老年医学雑誌に発表された症例報告で、タイトルは、「無治療にて自然退縮を認めた高齢者肺平上皮癌の 1 例」です。
症例は、82 歳男性
もともと持病として、狭心症、閉塞性動脈硬化症、高血圧症、糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患などの既往あり。
喫煙歴は1日20 本を50年間(20~70歳まで)
咳と動いたときの呼吸困難をみとめ、入院となりました。
肺炎(左肺下葉)と診断され、抗菌薬の投与をおこなっていましたが、治療中に撮影したCT検査にて右肺上葉に肺炎とは別の影(しこり)を指摘されました。
気管支鏡検査を施行し、生検(顕微鏡による組織の検査)で非小細胞肺がんの一種、扁平上皮(へんぺいじょうひ)癌と診断されました。
腫瘍マーカーは 、SCCが4.9 ng/ml、CEAは6.1 ng/mlと上昇していました。
PET検査では、右肺上葉の腫瘤(原発と考えられるがんの部位)に強い集積を認め、他にも鎖骨の上、気管の周囲、両側肺門リンパ節および左副腎にも同様に集積を認め、転移が疑われました。
以上の検査結果より、肺がん(扁平上皮癌)のステージ4と診断されました。
抗がん剤治療を検討しましたが、高齢であることや、経過中にゆっくりと進行する汎血球減少(はんけっきゅうげんしょう:白血球、赤血球、血小板がすべて減少する病態)を来したことから、骨髄の病気(骨髄異形成症候群)が疑われました。
このため、抗がん剤治療は困難と判断し、治療を行わずに外来で経過観察の方針としました。
しかしながら、診断から3ヶ月後のCTで右肺上葉のがんの縮小を認めました。
また、その1年後の検査でもがんは縮小していおり、PET検査ではリンパ節や副腎の集積も著明に低下しており、全身性に癌が自然退縮したと考えられました。
高齢の患者さんに発症したステージ4の肺がんが、無治療にもかかわらず1年以上にわたって自然退縮を認めたという症例でした。
がんが自然に縮小する理由?
というわけで、がんの自然退縮というのは、実際にあるわけです。
そして、その原因はもちろん解明されているわけではありませんが、多くの場合、免疫反応が関係している可能性が指摘されています。
たとえば、過去の報告例では、重症の感染症によって高熱が出た後にがんが縮小するといった報告もあります。
また、自然退縮したがんにはリンパ球が多く集まっているといった所見があり、活性化された免疫監視システムががんの縮小・消失に関係している可能性が指摘されています。
がんが自然に治る生き方
アメリカの研究者であるケリー・ターナー氏による「がんが自然に治る生き方」では、標準治療(手術、抗がん剤、放射線)を一切用いずに、がんが検知できなくなった場合を「がんの劇的な寛解」と定義し、じっさいに「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのことを紹介しています。
それは、
1.抜本的に食事を変える
2.治療法は自分で決める
3.直感にしたがう
4.ハーブとサプリメントの力を借りる
5.抑圧された感情を解き放つ
6.より前向きに生きる
7.周囲の人の支えを受け入れる
8.自分の魂と深くつながる
9.「どうしても生きたい理由」を持つ
だそうです。
もちろん、たまたま運がよくて、がんが自然退縮したと考えることもできるわけです。
しかしながら、こういった特徴の人が、がんを克服したサバイバーであることが多いということは、統計学的にどうかはわかりませんが、印象としては、あると思います。
この本については「科学的ではない」ということで批判もありますが、がん患者さんが希望が持てるという点ではいい本だと思います。
興味のある方は、読んでみてもいいかと思います。
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