コロナワクチンのひとつの懸念は免疫に対する影響で、「自然免疫系が破壊されて、突然、(ターボがん?)といった進行がんが発見される人が増えている」というウワサが流れています。今回は、ワクチンを3回接種した人の自然免疫(ナチュラルキラー細胞)のはたらきについての研究結果を紹介します。
はじめに
今回は、例のmRNAワクチンをくり返し接種すると、免疫機能が低下して、例えば、SNSなどで話題となっている「ターボがん」と呼ばれる急速に進行するがんが増えるのか?という疑問に対する1つの検証論文を紹介したいと思います。
コロナワクチンのひとつの懸念は、免疫に対する影響で、「自然免疫系が破壊されて、突然、進行がんが発見されることが増えている」といううわさが流れています。
ただ、それを証明するためには、実際に人での臨床データが必要です。
前回の動画で、新型コロナウイルスのワクチン(ファイザー製のmRNAワクチン)を接種しておよそ1ヶ月までの間に、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の数や機能に変化はみられなかった(つまり、免疫の機能は低下しなかった)、というスウェーデンのカロリンスカ大学からの研究論文を紹介したところ、色々なコメントを頂きました。
とくに多かったのが、接種後1ヶ月というのは短すぎで、それ以降の免疫の変化がわからない、というものでした。
では、くり返しワクチンを接種した場合には自然免疫系はどうなるのか?ということですが、調べたところ、ひとつ該当する研究論文がありましたので、紹介したいと思います。
ナチュラルキラー(NK)細胞とは?
その前に、ナチュラルキラー(NK)細胞についておさらいしておきます。
免疫には、生まれながらの「自然免疫」と、生まれてから獲得する「獲得免疫」があります。自然免疫の代表選手が、ご存じのようにナチュラルキラー(NK)細胞です。
NK細胞は、自然免疫系において必須のリンパ球で、血液中をパトロールしながら、異物を直接攻撃して排除します。
NK細胞は、インターロイキン12などの刺激で活性化されて、インターフェロンγ、グランザイムB、パーフォリンなどのサイトカインや細胞死誘導タンパク質を産生・分泌して細胞死(アポトーシス)を引き起こすことで、異物と認識した細胞を破壊します。
ですから、このNK細胞は、がんの監視システムとして、とても重要な役割をはたしています。
では、コロナワクチンを3回接種後のNK細胞のはたらきについての研究論文を紹介します。
コロナワクチン後のNK細胞の機能
2022年の8月に、Fronties in Immunology という雑誌に報告された論文です。
ちなみに、最新のインパクトファクターは、7.561ということで、免疫学に関してはそこそこ評価が高い雑誌です。イタリアのミラノ大学の研究チームによる報告です。
34歳から56歳までの58人の医療関係者に対して、ファイザー製のmRNAワクチン(コミナティ)を複数回接種し、免疫機能を経時的にチェックしました。
チェックした時期ですが、初回接種の直前、初回接種後7日後、21日後、2回目接種後、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後、さらに、3回目接種の10日後ということでした。
ですから、初回の接種からは1年以上たった時点での免疫機能ということになります。
結果ですが、ワクチン接種後に、ウイルスやがん細胞に対する攻撃力が強い活性型のNK細胞が増えていたということです。
この変化は長期にわたって続いており、各ブースター後に、活性型のNK細胞の度合いがさらに強くなっていたということです。
また、コロナウイルスのスパイク蛋白で刺激したところ、グランザイムやパーフォリンなど細胞死(アポトーシス)を引き起こすタンパク質を分泌するNK細胞が増えていたそうです。
ですから、ワクチンによってウイルスに対する抗体ができるという獲得免疫だけでなく、自然免疫系の反応も高まっていたということです。
当然、こういう活性型のNK細胞が増えるということは、がん抗原を認識して、攻撃する能力が高まることが予想されますので、逆にがんを抑制する方向に働くことが考えられます。
まとめ
というわけで、ブースター接種によって、自然免疫は低下するのではなく、むしろ、長期にわたって強化されるという研究結果でした。
とはいえ、ひとつの研究結果ですので、これが100%正しいわけではありませんし、さらに何年も先にはどうなっているのかはわかりません。
ただこういった人での臨床データが蓄積していくと、より確かなことが言えると思います。
今後の研究に注視していきたいと思いますし、新しい情報がでたら、皆さんにお知らせしたいと思います。
紹介した研究論文:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2022.947320/full
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