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農薬で汚染された野菜・フルーツの「がん」リスクは?残留農薬(殺虫剤)とがん死亡率に関する最新の研究結果

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農薬(殺虫剤や除草剤)のなかには、発がん性が報告されているものがあって、国によっては使用禁止となっているものもあります。今回は、野菜やフルーツに残っている農薬のがん死亡リスクに関する最新の研究結果を紹介します。

はじめに

今回は、避けては通れない「食の安全」をテーマにしたお話です。

これまでの国内外の多くの観察研究によって、野菜やフルーツを積極的に食べることは、がんの予防や、がん患者さんの生存率を高めることにつながることがわかっています。

ただ、ときどきコメントでもいただくのですが、野菜やフルーツに残っている農薬の危険性についての懸念があります。

現に、農薬(殺虫剤や除草剤)のなかには、発がん性が報告されているものがあって、国によっては使用禁止となっているものもありますので、心配になりますね。

というわけで、残留農薬は日本だけでなく、世界中の問題でもあります。

そこで今回は、野菜やフルーツに残っている農薬のがんリスクに関する最新の研究結果を紹介します。

農薬汚染のリスクが高い野菜・フルーツ

まず気になるのは、どういった野菜・フルーツがもっとも農薬の汚染が多いのか?ということです。

これに関しては、アメリカの活動家グループである「環境ワーキンググループ(EWG)」が調査して2019年に報告した、残留農薬(おもに殺虫剤)が多い野菜・フルーツと少ない野菜・フルーツがあります。

「Dirty Dozen(汚染された12品目)」ということで、農薬の汚染が多い代表的な食品には、ストロベリー、ほうれん草、ケール、ネクタリン、りんご、ぶどう、桃、さくらんぼ、西洋なし、トマト、セロリ、そして、じゃがいも、があります。

一方で、「Clean Fifteen(きれいな15品目)」ということで、農薬汚染が少ない代表的な食品には、アボカド、とうもろこし、パイナップル、グリーンピース、タマネギ、パパイヤ、なすび、アスパラガス、キウイ、キャベツ、カリフラワー、メロン、ブロッコリー、マッシュルーム、および、メロン(違う種類のメロン)があります。

あくまでアメリカの食品調査の結果ですので、日本で流通している野菜・果物にそのまま当てはめることはできませんが、似たような傾向があると考えられます。

残留農薬とがんリスクとの関係

では、こういった、残留農薬が多い野菜・フルーツを摂取すると、実際にがんのリスクが高くなるのでしょうか?

最新の研究結果を紹介します。

今年の1月に、Environ Int という雑誌に報告された論文です。

アメリカの3つの大規模な観察研究から、およそ16万人の成人を対象として、野菜とフルーツの摂取量、摂取した野菜とフルーツに残っている農薬(殺虫剤)の量、および「がん」などによる死亡率との関係を調査しました。

野菜、フルーツについては、それぞれ、アメリカ合衆国農務省(UADA)が調査した残留農薬(殺虫剤)の基準をもとに、残留農薬が多い野菜・フルーツと、残留農薬が少ない野菜・フルーツに分類されました。

そして、それぞれの摂取量と、がんなどによる死亡リスクとの関係を解析しました。

その結果、残留農薬が少ない野菜・フルーツの摂取量が多い人では、がんによる死亡リスク、および、すべての死因による死亡リスクが低下していました

もっとも多く摂取するグループでは、最も少ないグループに比べて、およそ20%、がん死亡リスクが低下していました。

一方で、残留農薬が多い野菜・フルーツの摂取量と、がんの死亡リスクとの間に、有意な相関は認められなかったとのことです。

つまり、がんによる死亡リスクは増えなかった、ということです。

今回の研究では、3つの異なる観察研究を組み合わせた研究であることや、各被験者の残留農薬の摂取量は推定値であること、殺虫剤の種類別のリスクはわからないこと、などの限界がありますが、少なくとも、残留農薬の摂取量とがん死亡リスクとの間に相関はありませんでした。

日本による残留農薬の規制は

最後に、日本の残留農薬に関する規制についてです。

厚生労働省の「食品衛生法における農薬の残留基準」という報告がありますが、このなかで、厚労省では、⾷品衛⽣法に基づき、農薬の残留基準を設定していて、この基準を超える食品の流通は禁止しているとのことです。

さらに、残留基準を設定すると同時に、食品のモニタリング検査を行っていて、実際の摂取量が健康に悪影響を与えないレベルであることを確認しているとのことです。

ということで、厚労省によると、あまり心配する必要はない、ということになります。

ただ、もちろん、今回の研究結果や、厚労省の報告だけをもって、「残留農薬はまったく気にしなくていい」とはいえません。

実際に、殺虫剤や除草剤のなかには、動物実験などで発がん性が確認されたものがある以上、リスクはゼロではないと考えられます。

ですから、可能であれば無農薬のものを選択する、あるいは、農薬の残っている可能性が少ない野菜やフルーツをとるようにするのがいいかもしれません

以上、農薬で汚染された野菜・フルーツの「がん」リスクは?というお話でした。

 

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外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。
  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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