「健康な人の免疫の維持をサポート」としいう機能をうたう機能性表示食品の「プラズマ乳酸菌」ですが、免疫の維持ということは、がん患者さんにとってメリットがあるのでしょうか?調べてみました。
はじめに
「プラズマ乳酸菌」が流行っていますね。
キリン イミューズというプラズマ乳酸菌入りのサプリメントや飲料がとても売れているとのことです。
免疫機能の機能性表示食品として届出公表された日本初のブランドだそうです。
この機能性表示食品とは、「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品」ということです。つまり、実験や人での研究で、何らかの健康に対する機能が認められた食品であるということです。
ただし、あくまで「食品」であって、医薬品や医薬部外品ではありませんので、病気の予防や治療効果を謳っているものではありません。
プラズマ乳酸菌とは?
さて、この話題の「プラズマ乳酸菌」とはいったい何なのでしょうか?
プラズマ乳酸菌とは、乳酸菌の一種で、英語では、Lactococcus lactis strain Plasmaという名前です。
このプラズマ乳酸菌は、一般的な乳酸菌とはことなり、免疫細胞の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を直接活性化するということです。
では、プラズマサイトイド樹状細胞とはどういった細胞かということですが、これは免疫で重要な役割を果たす抗原提示細胞である樹状細胞の一種で、「形質細胞のような樹状細胞」というのが名前の由来です。
病原体等の感染により活性化して大量のインターフェロンを産生し、また、自然免疫と獲得免疫の両方を活性化するという特徴をもっています。
一般的な樹状細胞は、自然免疫系であるNK細胞を活性化するのですが、このプラズマサイトイド樹状細胞は、自然免疫系だけでなく、獲得免疫系であるキラーT細胞、ヘルパーT細胞、B細胞を活性化することで、免疫系全体を活性化することができるということです。
なので、ウイルスなどの外敵に対する攻撃力が高まると考えられます。
プラズマ乳酸菌の人での効果は?
プラズマ乳酸菌の人での効果はどうなんしょうか?
KIRINのウェブサイトにこれまでの研究結果が紹介されています。それによると、プラズマ乳酸菌を摂取することで、
- インフルエンザ・風邪にかかった患者数が減り、喉の痛み、咳などの自覚症状が有意に減少した
- 皮膚上の表皮ブドウ球菌の減少が抑制され、アクネ菌の増殖が抑制されることが示唆された
- 運動部に所属する部員において、強度の運動後の「つかれ」の自覚症状の累積日数が有意に低下した
といった実験結果が報告されています。
ただ、論文を読んでみると、風邪の症状を少し軽くする程度の効果にとどまっていて、ウイルス感染を劇的に減らすといったものではないようです。
がん患者にとってプラズマ乳酸菌をとるメリットは?
では、がん患者さんにとって、このプラズマ乳酸菌をとるメリットはあるのでしょうか?
現在のところ、がん患者さんを対象としたプラズマ乳酸菌の臨床試験などは行われていませんので、治療をサポートする効果やメリットがあるというエビデンスはありません。
ただ、プラズマ乳酸菌によって活性化されるプラズマサイトイド樹状細胞は、ウイルス感染だけでなく、がんに対する免疫システムとしても重要な役割を果たしているという研究結果もあります。
じっさいに、プラズマサイトイド樹状細胞を使った「がんワクチン療法」が臨床試験としてはじまっています。
2020年に報告された論文では、皮膚がんのひとつメラノーマの患者を対象とした初の人での臨床試験において、このプラズマサイトイド樹状細胞のワクチン療法が、がんに対するリンパ球の活性が高まったということです。
ですので、そういった意味では、プラズマ乳酸菌によってプラズマサイトイド樹状細胞を活性化することは、がんに対しても有効な可能性があります。
ただし、これは仮説であって、あくまでも実際の研究による検証が必要ですので、がんに対する有効性についての研究も期待したいですね。
まとめ
がん患者さんにとってプラズマ乳酸菌をとるメリットは現時点ではわかりません。
また、この「プラズマ乳酸菌」に限らず、基本的には以前の動画でもお話したように、がん患者さんには、乳酸菌などの善玉菌と、そのエサとなる食物繊維を毎日摂取して、腸内細菌を整えること(つまり、腸活ですね)をおすすめしています。
ですので、腸活の一環として、このプラズマ乳酸菌を取り入れることはいいかもしれません。
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